「D90の後継機に視野率100%のファインダーが搭載される」という噂で話題になっていたD7000が発表された。
噂通り視野率100%が奢られているが、その仕様を確認していくと「ここまで盛り込むか」というほどの充実ぶりで、ネット上でも驚きと称賛の声をもって迎えられている。
次々に発表されるEVILカメラやミラーレス1眼が話題となる中で、カメラの主流は1眼レフだと言わんばかりにニコンが送りだした渾身の1台だ。

スーパーミドル級のカメラ
ニコンの1眼レフには昔からF1桁、D1桁のプロ用機を補佐するような優秀かつ高い人気を誇る中級機があった。
古くはニコマート、FE、FM、F100など。
デジタル時代になってからはD70、D200、D300などだ。
小型軽量な機体に、時にはプロ機を上回る性能を載せて、プロからアマチュアまで幅広いユーザーに支持されてきた。
事実上の先代に当たるD90も堅実なスペックが高く評価されており、2008年9月に発表されて以来2年間、常に販売ランキングに登場するロングセラー機だ。
しかし私が覚えている限り、このD7000ほどコストパフォーマンスの高いニコンの中級機は記憶にない。
これから2年以上、ニコンデジカメの主力機として売り上げを支えていくのではないだろうか?
例によって筆者が注目したスペックを中心に取り上げていきたい。
①有効画素1620Mピクセルで高感度画質を向上
搭載されている撮像素子は23.6×15.6mmのDXサイズCMOSセンサーで有効画素は16.2Mピクセルだ。
これはニコンのデジタル1眼ではD3X(有効画素24.5Mピクセル)に次ぐ高精細だ。
ちなみにこの画素ピッチでFXセンサーを作ると総画素数約39Mピクセルになってしまう。
将来のデジタルカメラを考える時の参考になるだろう。
さてこの高精細なセンサーのISO感度は100~6400で、ISO25600まで増感できる。
D300sのDXセンサーが同12.3MピクセルでISO200~3200、ISO100相当への減感、ISO6400相当までの増感ができる。
実際の画質はサンプルが出てくるまで比較できないが、D7000の場合、ISO1600くらいまでは十分常用できるのではないだろうか?
画素数がアップしていることを考えれば、大幅な性能向上と言えるだろう。
②RAW14ビット撮影で秒6コマを実現
通常12ビットA/D変換の撮影が14ビットで行えるというのは、諧調表現で有利になり、アクティブD‐ライティングを選択した際にも有利になるだろう。
D300sでも14ビット撮影はできたが、12ビットでは秒7コマを誇る連写性能が、14ビットでは秒2.5コマになってしまうという欠点があった。
D300sで14ビット撮影をした時の1コマファイルサイズが14.9MBで、連続撮影可能枚数が30コマ。
これに対しD7000ではファイルサイズが19.4MBで、連続撮影可能枚数が10コマ。
D7000の方が連続撮影可能枚数が落ちるのは不思議なようだが、ファイルサイズと秒6コマという連写性能を考えれば仕方のないことかもしれない。
この性能の向上は、素子からの転送系や画像処理エンジン・EXPEED2の性能向上によるところが大きいのだろう。
③動画撮影機能の強化
1920×1080ピクセル、24pのフルHD画像を最長約20分録画できるようになった。
24pで再生することでスローモーション効果が得られる30p、60pで撮影できないのは残念だ。
ライブビュースイッチと一体化された動画撮影ボタンは使いやすそうだ。
撮影中に「顔認識AF」「ターゲット追尾AF」など高度な機能を持つAFが作動する。
動画撮影中にシャッタースピードとISO感度をマニュアル設定できる。
リニアPCM録音が可能で、外部ステレオマイクに対応し、マイク感度が変更できる。
動画撮影の経験が乏しいので深く踏み込めないのだが、数多くの編集ソフトで処理できるH.264/MPEG-4 AVCに対応している点が最も大きいのではないだろうか?
④デジタル1眼初? T(タイム)露光の復活
懐かしい機能だ。
ニコンでは銀塩フラッグシップ機だけに与えられたこの機能が消えたのはいつだろう?
調べてみるとF4のシャッターダイヤルには「T」があるが、F5では消えている。

知らない人のために説明しておくと、この「T」は長時間露光用の機能で、主として天体撮影に使われる。
一度レリーズするとシャッター幕が開いて露光が始まり、もう一度レリーズするとシャッター幕が閉じる。
うちわに黒い遮光紙などを張った通称「うちわシャッター」を天体望遠鏡などレンズの前にかぶせた状態でシャッターを切り、うちわをレンズの前から外して露光をスタートさせ、目的の露光時間が過ぎるとうちわをレンズの前に戻してカメラのシャッターを閉じる、いわゆる「筒先開閉」をするのだ。
事実上カメラに全く触れずにシャッターを切ることができ、ケーブルレリーズなど「揺れ」の原因となるものをカメラに取り付けないので、数十秒~数時間単位の長時間露光に向いている。
私はF3で星野写真を撮るときによく使った。
D7000ではリモコンML-L3をレリーズ用に使ったときに機能するらしいが、通常のシャッターボタンでも使えた方が便利である。
(筒先開閉をすると、Exifデータはあてにならなくなるが)
それにしても銀塩フラッグシップ機のF6にも、超絶的高感度性能を誇るD3sにすら搭載されていない「T」が、なぜD7000に搭載されたのだろう?
デジタル1眼時代の天体撮影の露光時間は、受光素子の発熱によって生じるノイズを避けるために長くても10分程度だ。
夜空を星の輝跡が流れる星野写真も、複数枚、時には数十枚撮ったものを合成してつなげるのが主流だ。
もしかしたら銀塩フィルム時代のように数十分単位の長時間露光を可能にする、とんでもない低ノイズ性能がD7000に備わったのでは?と期待してしまう。
⑤Aiレンズが使用可能に
ニコン製のマニュアルレンズを多数保有する身としては気になる機能で、筆者が真っ先に確認したスペックだ。
D300sにはあるが、D90にはないこの機能が、上級機とそうでないカメラを分けていたが、D7000には搭載された。
CPUを搭載していないレンズでも、絞り環にAiリングが付いていれば絞り優先、マニュアル露出モードで使うことができる。
また手動で焦点距離や開放絞り値を登録することにより ①スピードライトのオートズームが作動 ②ファインダーや背面液晶に数値が表示 ③RGBマルチパターン測光が動作 ④絞り値 焦点距離がExifデータに表示 などのメリットがある。
ボディに手持ちのAiレンズの情報を9本まで登録できる。
グリップ上部の赤いラバー部分のすぐレンズ側にあるファンクションボタンの機能に「手動設定済みレンズの選択」を登録しておけば、すぐに呼び出すことができる。
欲を言えば、CPUレンズであれば収差を補正してくれる「自動歪み補正」が適用されてほしいのだが、残念ながら非CPUレンズの場合は機能しないようだ。
⑥視野率100%の光学ファインダー
あえて最後に持ってきたのだが、ニコンではフラッグシップ機のみに与えられたスペックだ。
倍率は0.94倍、アイポイント19.5mmはD300sと同じ。
頼もしさを感じさせる見やすいファインダーだということは容易に想像がつく。
前項でも出てきたファンクションボタンに「ファインダー内水準器」を設定しておくと、ボタンを押した時、露出表示インジケーターが水準器に早変わりする、、、、という。
ただしファンクションボタンに設定できる機能は1件だから、レンズ情報を設定するとファインダー内水準器を同時に設定することはできない。
ミラーレスカメラが刺激に?
ここに挙げた以外にも2016分割RGBセンサーはD3s(1005分割)にも搭載されていない最新型のセンサーだし、最新規格のSDXCカードにも対応するダブルスロットもポイントが高い。
(16Gの高速CFカードを2枚買ったばかりの筆者にはダメージだが)
これらのフラッグシップ機並みの機能を、小型軽量なD90のボディに押し込んだのがD7000というわけだ。
D7000のボディは約132mm×105mm×77mm、重量は本体のみ690g。
D90は約132mm×103mm×77mm、重量は620g。
その差は70グラムだが、D90のボディが樹脂製であるのに対し、D7000はトップカバーと背面カバーがマグネシウム合金で、防塵防滴処理も施されているのだ。
使い古された言い方だが、「羊の皮をかぶった狼」という言葉が頭に浮かんだ。
D7000のライバルとして真っ先に上げられるのがCanon60Dだろう。
ニコンとしては60Dを完全に上回る性能を目指して持てる技術をつぎ込んだのだろう。
しかしニコンはCanonだけでなく、SONYやPanasonic、Olympus、Samsungから発売され、1ジャンルを築きつつあるEVIL/ミラーレスカメラをかなり意識しているような気がする。
例えば視野率100%というスペックだ。
ニコンユーザーであることを一時忘れてこのスペックを見ると、Pentax K-7、Canon5DMk2や7Dなど100%視野率を謳う中級機が既に登場している。
加えて1眼レフカメラでは高度な精度を要する100%ファインダーも、EVFや背面液晶を使ったライブビューカメラでは「当たり前」の性能だと言えることなどから、「100%視野率は、もはやプレミアムなスペックとは言えない」とニコン自身が判断したのではないだろうか?
Aiレンズが使えるようになり、⑤で挙げた非CPUレンズの情報登録機能が搭載されたのもEVIL/ミラーレスカメラが登場した影響ではないだろうか?
EVIL/ミラーレスカメラはアダプターを使うことによって、様々なメーカーのレンズを時代を超えて使用することができる。
ニコンのフラッグシップ機でも使うことのできないNikonF時代の非Aiレンズですら、EVIL/ミラーレス機なら使うことができるのだ。
これはニコンにとって「由々しき事態」だったのではないだろうか?
その状態を解消するために必要だったのがD7000だったのだろう。
そして私のように1眼レフユーザーでありながら、新しいシステムとしてのEVILカメラにも心惹かれているカメラマンに対して「これでも不満ですか?」と言っているような気がする。
ニコン自身、新システムのカメラを開発していると伝えられるが、そのカメラを発表する前にどうしても現在のEVIL/ミラーレス機を凌駕する1眼レフ機を作っておく必要があったのだろう。
ニコンのメッセージは十分に届いていると思う。
筆者としても「どのカメラがいいですか?」と問われた時、「予算が合うならD7000をどうぞ」と迷わずに言えるカメラが登場したことを喜びたい。
「名機誕生」の予感がする。
追記
D7000が発表される一方で、ニコンからはFマウント用の交換レンズが次々に発表されている。
しかもAF-S 24mmF1.4G、35mmF1.4G、85mmF1.4Gと20万円近辺のFXサイズ用大口径単焦点レンズが続く。
AF-S 200mmF2G ED VR IIにいたっては、861,000円の超高級レンズだ。
こういう時は概してカメラ本体の方もフラッグシップ機が登場するものだが、、、、、Photokinaで発表されるのだろうか?
もちろん、これらのレンズをD7000で使っても、威力を発揮するのは間違いないのだが、、、、、、
追記2
本屋に行き「アサヒカメラ」を開いたら『1眼レフの大逆襲』。
ありゃー、見出しかぶってるなー、変更した方が無難かな?
そう思って「日本カメラ」を見たら表紙に『1眼レフの逆襲』。
この状況で考えることはみんな同じか~ 『DSLRリターンズ』くらいかな?
まあ、いっか。パクったわけじゃないし。